グレーを白くしようとするな

海堂尊関連で代理出産で問題になった医師が誰だったのか気になり、調べたところ「Dr.根津八紘物語」という漫画が無料公開されていたので読んでみた。

 

私自身は代理出産には反対であるため、漫画の誇張した表現(会見で批判的な意見を述べる女性を殊更悪そうに描いたりするなど)には正直辟易してしまったが、根津医師が決して安易に代理出産を請け負ったりはしていなかったことは分かった。代理出産の希望者とは綿密な面談を行い、最悪死亡することもあるというリスクを(おそらく代理母家族も)了承し、この人達なら大丈夫だという場合に施術を行ったようだ。そして、万が一依頼者が子供の引き取りを拒否した場合、自分自身が引き取り育てるということも決めていたようだ(育てるっていっても実際のお世話は別な人がやらざるを得ないだろうから、この言葉は素直に受け取れないが)。

 

読んでいて気がついたのは、この漫画に描かれていたケースは代理母側が「この夫婦の為に産んであげたい!」という、死のリスクも厭わないくらいの強い熱意を持っていたということだ。

 

しかし代理出産を合法化することは「私は身体的な事情で産めないから誰か代わりに出産してくれ(死のリスクも承知でね)」という要求をOKとすることじゃないか?それは、するのも受け入れるのもやっちゃいけないことだ。生まれつき子宮がなければ、病気で摘出してしまっていれば、他人に死のリスクを引き受けさせても良い、その資格がある、ということになるのか?そんな訳はない。命は無事だったとしても、妊娠出産は身体に色んな形でダメージを与え、その後何十年も影響を及ぼすのだから。

 

根津医師は会見で代理母のボランティアを募集し、それに対して少なくない数の応募があったそうだ。しかし厳しい内容のアンケートを送付したところ応募者はゼロになったという。この事からも、代理母は「産めない側」のためのものではないのだと分かる。

 

私は「この夫婦の代わりにどうしても自分が産んであげたい!!」という人のためなら代理出産があってもいいのではないかとは思うけど…まあそれでも合法化なんてされたら強要されて産まされる被害者は絶対出てくるよな。死の危険がある訳でもない苦しみを救うために作った制度が少なくない数の女性達を死の危険に晒す可能性があるなら、やっぱりやるべきではないよ。

 

…といっても今ではとっくに代理母ビジネスは世界中で行われていて問題が噴出しているようだけどね。合法化なんてしようとせず、グレーなままでいればもしかしたら今よりマシだったのかも?って思っちゃうよね。