海堂尊「コロナ」シリーズ

前に「本当のことを言われると人は怒る」という言い方はズルい、と書いた。その後はすっかりそんな事は忘れていたのだけれど、海堂尊さんの本を読んでいたらこれが正解、という文を見つけた。それは「人が怒るのは、全くのデタラメを言われた時か、本音を言い当てられた時のどちらか」というものだ。

 

そうだよ、それそれ!と何度も頷いてしまった。「デタラメ」の方を省いちゃダメなんだ。むしろ後ろ暗いところのない人にとっては「デタラメ」に対して怒るときの方が多いんじゃないか?これでモヤモヤがようやく晴れた。スッキリした気分だ。

 

それにしても、簡単な言葉で表せるはずの内容を、ダラダラとしか書けない自分の言語化能力のなさには落ち込んでしまうな。海堂尊さんの文章は本当にスッキリ爽快で、ここだ!という一点を正確に突き刺してくるような鋭さがある。それだけでなく、登場人物たちは時々実在の人物以上に自分の心の中に強い印象を残し、たまに思い出しては切なくなったりしてしまう。

 

と、海堂尊ファンである私だけれど、実は「コロナ」シリーズが刊行されていたことをつい最近まで全く知らなかった。本屋さんにはちょくちょく行っていたのに、気づけなかったのは痛恨の極みだ。

 

「コロナ」シリーズで書かれていることは、フィクションも交えているが大部分は事実である。

 

私は確か、ダイヤモンド・プリンセス号の騒動の頃にTwitterを始めた記憶がある。岩田医師が乗り込んだ動画も見た。その後、いわゆる「イクラ」という人達が「あの人はホラ、いつもああだから」みたいなことを書いていて、私はどちらも信用できないなと感じた。

 

バブバブいってる医師とか手を洗う医師とかがやたらと馴れ合っている上、自分の違う主張の人間を小馬鹿にするような態度を取っていて、こういう人間は大嫌いだと思った。PCR検査抑制もそうだ。毎日のように「PCR検査やってくれ」とテレビで訴えていた女性(役職は忘れた)のことをイクラはひどくこき下ろしていたっけ。

 

「天使にラブ・ソングを」かなんかの動画に字幕をつけて「PCR検査はリヴァイ班並の精鋭しかできないんだよ」って言ってる動画も見た。数学教師が感度と特異度の計算のやり方を説明して、結論としてPCR検査は信頼できないと言ってる動画も見た。その時にはもう私は「何が正しいのかわからない」と思っていたし「学問の素養がないと生きていくには危険が多すぎる」とも感じていた。

 

海堂尊さんの本だけで「これが本当のことだ」と信じることも盲信につながる危険な態度だが、きちんと根拠が素人にも分かるように示されている部分は読んでおくべきだと思う。そして自分でも調べてみると尚良いだろう。とは言え、「自分で調べる」にはそこそこのレベルの素養が必要なのだ。やっぱり勉強って大事だな。